先日
「俺ではない炎上」浅倉秋成
を、読了しました。
こちらは前に、御書印をもらうときに購入したものですね。

↑これね。
お話としては
一つのSNSの投稿から始まります。
そこは
「血の池」と犯人が称すほどの殺人事件。
それを「マジもんだわ」ってリツイートする
住吉初羽馬(すみよししょうま)。
そしてその後、そのリツイートがバズっていく。
ネット上ではこのツイートが誰だ・・つまり、犯人はだれだろうという特定が始まる。
公園の場所がわかり、アカウントの名前が「たいすけ」だったことそのほかいろいろを突き止めたネット民たちは
ある大手不動産会社の営業部長、
山縣泰介がその人であろうと断定する。
山縣泰介はSNSどころかネットは全くわからない中年オヤジ。
営業成績はよい。
自分で言うのもなんだが、人望もある。
今日はコンテナハウスのメーカーに打ち合わせに来たが、先方の青江という男にパンフレットの言葉の間違いを指摘したのに、まだ治っていないことにちょっと腹が立つ。
会社に戻るとみんなの様子がおかしい。
支店長に呼び出されて話を聞く。
「これは?」
いやいや、SNSなんて知らないし、ましてやこれは自分ではない。
そういえば帰りに入った喫茶店で、知らない若者にスマホのカメラを向けられたが、あれはもしかして自分を撮っていたのか?!
とりあえず、自宅待機を言い渡されるが、家に戻るともう家の前には野次馬と、You Tuberとマスコミがわんさかいて入れる状態じゃない。
しょうがないのでビジネスホテルに落ち着いた。
一方、妻も実家に避難する。娘の夏実も学校で先生に呼ばれ、早退し、母のもとに行く。
そこから山縣の逃走劇が始まるんだけど、
その前に夜、家にそっともどって逃走用のいろいろなものをとりにいくと、
ポストにいろいろ入れられてて、その中に、家の倉庫のカギが入っていた。
普段は倉庫の外に置き鍵しているからポストに入れることはないのに。
そこでそっと倉庫をあけてみると、生臭いにおいと、大きなビニール袋があった。
きっといやがらせで生ごみを入れられたのだろうとそれを出してみるとその中には
女性の遺体が入っていた。
びっくりしたら、家の外にいた野次馬にみつかった。
この状態で見られたら、絶対自分が犯人あつかいだ。
あわてて山縣は車に乗って逃走する

が、どうやらその高級車が特定されている、スマホのGPSで位置情報がばれていることに気が付く。
車に乗ってるスポーツウエアーとスニーカーに履き替えて、走って逃げることにする。

今や山縣は2人の女性(大学生だった)の殺人犯として、警察とスマホをもった一般人に追われる身となってしまった。
女子大生を公園で殺したあのSNSには謎の言葉があった。
『「からになえくさ」に持っていくかはまだ考え中』
「からになえくさ」ってなに?
ネットでも、テレビでもこの言葉が何を意味するのか、推理が始まる。
「唐」「贄」な「草」?
実は2人目の遺体を山縣が見つけてしまったとき、倉庫のカギと一緒に入っていた茶封筒の中にもこの謎の言葉「からにえなくさ」が書いてあった。
警察もこのSNSは調査しているし、ネット民も山縣になりすましの説も考えた。
だが、このSNS,実は10年ぐらい前にアカウントが始まっていて、
自己紹介欄は「ゴルフ仲間がほしい」で(山縣の趣味はゴルフ)
時々、ゴルフバックや道具の写真がUPされているし、家族団らんの話がある。
それは裏付けしても、おかしくない日時。
途中長らく放置はされていたものらしい。
目線として、この山縣メインなんだけど、
警察目線、
娘の夏実目線、
初羽馬目線
の4方向で話が進んでいく。
警察もみんな、状況証拠的に山縣泰介が犯人だと思っているんだけど、
一人だけ
「違う可能性もあるのでは?」って思う人がいたり、
娘はもちろん、父の無実を信じていている。
初羽馬は、リツイートがバズってから他人事だったが、DMできた「サクラ(んぼ)」という女性に呼び出される。
殺されたのは私の親友だったから、山縣を探すのを手伝ってくれという。
車にのせて、彼女の言うとおりに走っているとき、急ブレーキを踏んでしまった。
彼女のカバンの中身がぶちまけられる。なかに、
包丁2丁がタオルにくるれて入っていた。
だんだんわかってきたことは、
殺された女子大生二人の共通は、どうやら美人局?っぽいことをしていたらしい。
後には、怖い組織があった?
で、その美人局やってたらしいのは2人ではなく、3人。
死んでない3人目の本名をどうにかこうにかしたら・・・
「サクラ」ともとれる。
え?この車の
助手席にいるのは3人目の女?後ろにやばい組織がついてる?
山縣をみつけて、殺そうとしている?

そのあとは、俺も・・?

山縣はもともとランニングで鍛えていたのもあり、警察が思うより先に逃げていた

が、途中過激系You Tuberに遭遇しかけて、草むらに泥んこになりながら寝転んで逃げたり、
なかなか前に進めない。
途中の何もしらないスナックで焼きそばを食べたぐらいしかお腹にはいれていない。
そういえば近くに元部下が住んでいる。彼はもう会社を辞めたが、部下だったときは慕われていたはず
と、そこに向かうが、追い返されてしまう。
そこで知る。
人望があり仕事ができる営業部長、誰からも恨まれてないはず・・・って思っていたのは自分だけで、彼曰く「あなたを恨んでいる人がいすぎて、特定できない」
自分の人望のなさに驚愕する。
もう頼る人もいない。どうすれば・・
そうだ、近くに
コンテナハウスのモデルルームがあったはず。
そこでコーヒーをだしてもらえたので、もぐりこめればコーヒーぐらい飲める。
この寒さをしのぐことはできるかもしれない。
コンテナハウスのモデルルームに真正面からはいることはできない。
事務所に人がいて絶対にとめられる。
どうにか入り込むためには、外側の高いところから何メートルもおりることになる。
でもロープもない。どうやってはいるか・・
そうだ。今着ているものをつないで木にくくればどうにかこうにかなるかも・・
今着ているものを脱いでつないで降りる。まだあと残りをどうにか飛び降りる。
そしてモデルルームの扉をあけると・・・ひらいた!中には誰もいない。コーヒーもセットされている。ようやく暖かいものを飲めた。毛布で包まれば、下着だけだった身も温められる。
が、
青江に見つかる。
万事休すと思ったが、青江は
「山縣さんは犯人じゃないとおもう」という。
なぜなら、
あの
SNSは「ら」ぬき文章だったし、言葉の意味の使い方が間違っていた。
山縣さんは言葉に厳しいから、あんな文章を書くわけがない。
ここで青江という大きな味方ができた
夏実には、以前SNSで苦い思い出がある。
両親に与えられたスマホは楽しくていろいろやっているうちに
ある人と知り合った。いつも趣味の話をして楽しかった。
自然と「会おう」ということになって、こっそり会いに行こうとする。
だが、
相手は実はロリコン男で、小学生の夏実はあわや被害にあうところだった。
会いに行く寸前に、親に見つかりめちゃくちゃ叱られた。
それこそ、倉庫に一晩閉じ込められるほど。
それは彼女の中で大きな事件だった。
初羽馬はサクラの包丁にビビって

、言うなりに車を走らせる

3人中2人が殺されたから、裏の組織に言われて山縣を殺しに行くのか?
もしかしたらサクラが女子大生2人を殺したのか?
俺を殺して、なにか隠そうとしているのか?
山縣は青江に車を貸してもらえることになる。
部下に手伝ってもらうこと一心だったのにそれがくずれ、これからどうすれば

・・と思っていたが
このコンテナハウスに来る少し前、自分がやっていないのだから、犯人をつかまえればいいんだと思う。それが目的になってちょっとモチベをあげる。
そこで思い出した。あの倉庫のカギと一緒に入っていた茶封筒の中。
誰も信用するな、逃げ切ってほしいというメッセージの最後
『どうしても辛くなったら「36.361947. 140.465187』
この数字はなに?
そして差出人?
「セザキハルヤ」とは?
夏実は祖父母に閉じこもっていたが、前に、ロリコン男事件の時に慰めてくれた同級生男子のえばたんが通りかかった。
話をして、そっと祖父母の家を抜け出し、自宅に帰る。
うまい具合に誰もいない。
いつも置き鍵をしているのでそこからカギをとりだして家の中にはいることができた。
あの時、閉じ込められた倉庫にも。
長らく学校にも行けてない。
そんな時、えばたんがまた、祖父母の家の前を通って声をかけた。
「久しぶりだね。大丈夫?」彼は相変わらず、優しい。
「外にこっそり出てこれないの?」「出れるとのは出れるけど・・」
祖父母も母も警察が出入りして、夏実に父親のあれこれを聞かせてはだめだと思い、
部屋にいるように言われているけど、そっと外に出ることはできる。
ただ自分が外にでるのが億劫になっていただけだ。
ニュースで見たSNSの言葉で、世の中のみんながわからないといっている
「からになえくさ」について、夏実は
「私、実は知ってる」という。
一緒にその
「からにえなくさ」の場所にいく。
瓦屋根の3つの家の真ん中。
そこには看板があったのだが、もうほとんどの文字が消えてしまっている。
もともと
『ここ
から先、私有地につき立ち入り禁止
※動物
にエサをあげ
ないで
くだ
さい』
の看板だが、古くなってほとんどの文字が消えている。
唯一残っている文字を読むと「から二なえくさ」となるここが、「からになえくさ」だ。
廃墟となっているが、まだ座り心地のわるくないソファーにすわる。
そして、父のウォークマンを取り出す。
それはWI-FIにつなぐとSNSにつなぐことができる商品。
「どうしてお父さんのふりをしてSNSをしていたの?」
「お父さんに友達を作ってあげたかったの」
そう、実はあのSNSは娘の夏実が作ったアカウントだったのだ。
自分はネットで変な人につかまりそうになった。だからお父さんもお母さんもネットは悪いと決めつけている。
でも、ちゃんとネットを使えば仲良しの友達もできるんだ。
お父さんが大好きなゴルフの仲間をもっと作ることができたら、きっと「ネット=悪」のイメージが変わってくれるとおもう。
それが私が
私の意思を貫く、ということ。
えばたんと夏実が好きな漫画の主人公のセリフだ。
「主人公のセザキハルヤの言葉だね」
その名は、泰介がポストからうけとった茶封筒の手紙の差出人の名前だった。
青江に車を借りた泰介は、あの
数字が座標を表していると知ってその場所に行く


瓦屋根の建物3つ。


「からになえくさ」は、真ん中の建物のはず。
中に入ってみると、古びて誇りのかぶった家具、
ソファーに座ろうとおもったが座れる状態じゃない。
なぜか机にウォークマン・・これは自分がかつて使っていたものだ。
充電はされている。ひらけてみると
、あの惨状の写真がはいっていた。
そしてこの家、なんか湿ってる?
奥にタンクがある。おそらくプロパンガス。
ここまで逃げてきて、もう疲れた

日本中全員が自分を追っている。
ここで、ガスをひねって、火をつけたら・・おそらくこの湿っているのはガソリンかかにかだろう。
もう・・・いいか・・・
そのとき、
「お父さん!」後ろから声をかけられた
サクラに指示されて、初羽馬がたどり着いた場所は、瓦屋根3つの建物。
サクラは初羽馬に、ある人物がここにくるからそしたら捕まえてくれといって、建物に入っていた。
そしてその男は現れた。
実は
サクラは、美人局3人組の1人ではなく、夏実。
泰介
警察
初羽馬
夏実
の4視点で語られていたのだが、夏実だけ10年前の視点。
彼女が語っていた
「事件」は今回の「女子大生2人殺人」ではなく、「ロリコン男の被害にあいそうになった事件」のこと。←あえて、ミスリードさせるように書かれていて、織り込まれている。
すでに彼女は大学生になっていた。
えばたんも同じく。
そして犯人は、
えばたん。
SNSは10年前に夏実が「父に友達が~~~~」の理由でつくったのは合っていて、
えばたんは美人局という楽をして生きてる彼女らが許せないと思っていた。だから殺した。
そして10年前、友達の夏実を倉庫に閉じ込めたアイツも許せなかった。
夏実が「
からなにえくさ」と二人で呼んでいた建物に父親のウォークマンを置いてあることは知っていた。
なのでそれに充電をして、そのままアカウントをつかって、泰介に濡れ衣をきせた。
追いつめて、追いつめて、絶望しかけたときに自殺できるようにガスと火を用意すれば、その火で証拠もなにもかもすべてが消えてくれると思った

夏実は、SNSを拡散させた
初羽馬がそもそも父が陥れられる元凶だと思っていて
彼をつれて、父を助けるために奔走していた。
包丁は、とりあえず護身用?
あのアカウントが家の中のことを細かく話ていたのは、夏実がかつて話していたことと、
えばたんと夏実が10年前、一緒に家に行ったときに、
置き鍵の場所を知って、いまでもそこにカギがあったので家に簡単に侵入できたから。
倉庫のカギの場所もしかり。
真犯人が捕まると、ネットの書き込みががらりとかわる。
あれだけ山縣泰介を非難して顔写真をさらして正義とばかりに糾弾している書き込みばかりだったのに、
糾弾していたアカウントに
「一人の人生を壊した責任をとれ」という書き込みになった。
「私たちが間違ったのは、情報開示しない警察のせい」
「私たちは、悪くない」
結局、
真犯人のえばたんも、「悪いことをして楽して稼ぐ女たちを成敗しただけ」「子供にひどいことをかつてした親に報復をしただけ」で、
それは自分は正義を貫いただけで、悪くないとおもっている。
名乗っていた
セザキハルヤは、あのアニメの主人公。
自分の正義を貫き通すキャラクター。
夏実は、あのロリコン事件のときに「SNSで誰かと会おうとしたことは悪いことじゃない。使い方によってはいいことだ。だからお父さんがわかってくれたら、私が悪いことをしたんじゃないと理解してくれる」とおもっているし、
初羽馬は、もともとあったツイートをリツイートしただけで悪いとは全くおもっていない。
ネット民たちも、泰介を糾弾していた人たちは「情報開示しない警察や政府がわるい。自分たちは踊らされただけ」と持っている。
そして山縣泰介も
正しい、これが当たり前というのを、自分にも課していたが部下や周囲にも強要ともいえるほど圧をかけていたことに気が付く。
それをみんなが嫌がっていることに気が付かない。
当然
「自分は正しいことを、正しくしているだけ。悪いなんてこれっぽっちもない。だからみんなに好かれているはず」と思っていた。
みんなのそういう「自分は悪くない」という意識が、この事件を起こした・・・
っていう話でした。
最後の解説にあったのですが、
山縣は最初、高級車でスマホもって高級なスーツで逃げます。
だけど最初に、車とスマホとスーツを置いて逃げ、
途中、スナックでジャケットをぱくるけど、結局それもばれてそれも捨てます。
ずっと走っていたのでスニーカーもぼろぼろ。
そしてなにより「人望がある」という自信もなくなる。
You Tuberを恐れて、草むらに寝転んでどろどろになる。
最後、青江のコンテナハウスにはいったときは
来ていた服もロープにしたので下着姿。
何も持ってない、ただの中年男になっていく・・・
って書いてて、
ほんとだわ~って思ったのと、
それで何もない中で、
他人に厳しくいって嫌がられていたいたのを
部下などはその場でへいこらしていたのに、
指摘したら顔色かえずに「あ~はい」って不愛想にしていた青江が
その「言葉の間違い」がおかしいということで「山縣が犯人ではない」と断定してくれたのが
私的にめちゃくちゃうれしかったんだよな。
読んでて鳥肌立った。
モノじゃなくて、貫いていた信念みたいなものを、しっかりわかってくれる人がいたってことが
何もなくなった彼に、最大の救いになったよな~。
最後、山縣は周りに優しい男になる・・ような・・・。
それが、ずっと続くといいんだけど・・ねぇ。
わかりにくいかなっておもったので、
夏美とえばたんの10年前と現在に行動の時系列だけ書いて終わりにします
10年前の出来事
現在の出来事 えばたん

現在の出来事 なつみ

PR
この記事へのコメント